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第8回ロードレースアカデミー
今回、僕の他のアシスト講師は東京ベントスのトム・ボシス選手。彼はAG2のサテライトチームでレースを行なっていたフランス人。まだ24歳。さすがに日本とフランスの文化の違いを感じるくらい彼はバイクコントロール技術を持っています。
日本語も堪能で、漢字も書ける。彼のセンスに触れるだけでも参加者は感動し楽しんでいただけると思います。
今回も講習場所は富士スピードウェイP2。ほぼフラットでありながら若干の起伏を持つこのシンプルなコースは、講習を行うのにうってつけの環境。
冬の間も開催していますが、冬の間はダウンジャケットなどをウエアの上にはおりながらの講習なので、今回ようやく春になってきて暖かくなってきてとても嬉しい。
今回のスクールの目的はバイクのコントロールを上達させること。参加者をレベル別にわけることなく、参加者に対しての講師の数を保つことできめ細かな指導をすることを心がけています。正直、プロとアマチュアに確実な差があり、初級上級もないというのが現状です。
またコーナリングが上手い人も、何度も同じことを精度を保ちながら行うことも集中力が要ることなので、上手い人には上手い人なりの目標やスピードの設定をを。まだまだ、レベル的に操作が不安定な方にはそれなりの目標を、講師の方から細かく指導します。なのでレベルの差、性別の差があろうと、各個人のレベルアップを積極的に行えるプログラムを開発しています。
初級だからこう教える、上級だからこう教える、そんな単純な3通りのレベル分けだと本質的な部分にたどり着けないと感じています。
では何が本質かと申し上げますと、参加者が自らのレベルや目標に気づき、参加者が自らの課題に向き合える手助けが出来る講習こそ、それぞれのレベルに合わせた参加者が満足できる本当の講習だと思っています。
極端な話、午前中3時間、午後3時間の講習で女性ライダーのレベルでも「息が上がる練習」というのは、本当に最後の40分のみです。そこに関しては講師が複数いることを活かし、走力別に2グループ制で(参加者が入りたい方を選べる)若干プログラムを変えながら行いますので、女性の方でも最後まで楽しみながらレベルアップが出来る1日の構成になっています。
午前中は基本的なプログラムから始まり、9時に講習がスタートします。
【発進と停止】
まずは発進と停止。ブレーキングのフォームづくりから、信号などで発進するときに必要なまっすぐ発進する技術を磨く。この段階でかなりの参加者が、自分のスキルと講師との差に差があることを実感して講習に身が入っていくのを感じました。
最後はウエットコンディションでの練習も行いました。
【曲がる】
約1時間半にも及ぶコーナリングセッションは、最終的に峠の下りなどで必要なスピード域、40km/hほどのスピードから、ブレーキングからしっかりとクリッピングポイントを掴み、コーナー脱出する練習まで、参加者一人一人のレベルに合わせて取り組んでいただきました。
ブレーキング、コーナリング共に数十秒前に講師から言われたアドバイスをすぐに実践出来るのがこの講習の本髄。
参加者の安全レベルの向上を感じながら午前中のセッション終了。
昼食後、午後のプログラムは午前中の講習の応用となります。
【立ち漕ぎ、ハンドル操作】
まず午後のプログラムのカリキュラムはダンシングレッスン。
ここでの目的は、「休むダンシング」のコツを掴んでもらうこと。まず講習ルームでの座学にて、バイクを倒す意味、ダンシングする意味を理解してもらうことをしっかりと理解してもらいました。
僕がみていて、一般の方はダンシングをしなさすぎる傾向にあると思っています。ダンシングはとても難しい反面、しっかりと基本から身につけていけば、体幹トレーニングにもなりますし、サドルで常に圧迫されている陰部の痛み軽減に繋がります。
ダンシングが、まともに出来ないのにいくらサドルばかり変更していても本質的ではないのではないか?と思うのが正直なところです。
重心の位置を感じること、ハンドル操作、体幹部分の安定方法、しっかりとペダルに乗ること。
こちらも先導走行や、後ろから走りながらアドバイスを行い、レベルアップを図りました。
人によっては、よりバイクを振るべき人、バイクを振り過ぎないように気をつける人、膝の軌道を整えるべき人、様々な症例を見ながら適正なアドバイスを約一時間繰り返しました。
ただ、もっともっとやりたいのですが、初めてこれだけダンシングするという参加者も多く、体幹の疲れからバイクの振り幅やリズムが崩れてしまう方も多くみられました。
ダンシングなんかもとても難しいスキルなので一朝一夕には行きませんが、今回掴んだ「あ、脚に来ないな」という感覚を忘れずに継続的にトレーニングに導入していただければと思います。
【ペダルを回す動作と、先頭交代】
富士スピードウェイはもちろん、富士山の麓に存在します。
天候も変化があり、そこもまた講習にとても有意義なエッセンスを加えてくれます。午後になり風が少し吹いてきて一周約1キロの特設コースのストレート部分が横風区間に変化します。
そんな環境での先頭交代。初めての方でも大丈夫。時速24km/hという低速でまず基本的なフォーメーションを理解し、無線機でペーシングのアドバイスを行い参加者全員でより楽に走ることをレクチャーして行きます。
あまり日本のイベントでは実感が持てないことかもしれませんが、本場ヨーロッパのレース中に行うローテーションも基本は「グループ全体で速く走る」ことであり、決して相手を苦しめるための先頭交代ではありません。
ペースがイマイチだからど、急激なペースアップをする方が日本のイベントやレースでも散見されますが、そのような行為は周りにとっても、その方にとっても不利益でしかありません。
ただ例外もあります。上り坂などで先頭でペース上げることにより、相手にダメージを与えたり、相手からの攻撃を防いだりする瞬間です。そのようなシュチュエーションであっても、基本を理解していないと、無駄足を使いがちなのでぜひ注意して考えて走ってもらえたらと思います。
【レース戦略、攻撃ポイント】
最後のカリキュラム。ラスト40分にきて、ようやくここで息が上がるトレーニングの開始です。
ショートレースを4回。
一周1kmの特設オーバルコースを4周。その最後の一周でどう闘うか?
基本的に講師が中盤までペースを刻み、ローテーションの基本練習。その後脚が皆残った状態からの戦略重視の模擬レースを行います。
脚が限界にきている方と、女性陣はTom講師により先頭交代の向上を任せて、僕は模擬レースへ。
模擬レースグループにも脚力差があるので僕が、遅れそうな人に関してはハンディを与えて他の参加者にとってもラビットになっていただきました。
ハンディを設けることより、より参加者同士の集中力や相乗効果を生むことにもつながります。
一本目は3周まで一定ペースでローテーションを行い、鹿児島県からの参加者が少し先行するが、中途半端な抜け出しに終わり、アタックポイントを誰も活かすことが出来ずに20代の参加者がが先着。
このような勝負の場面になった時の、シチュエーションに対応するための練習をしっかり行っていくことは、最終局面でで勝利を手繰り寄せる時には必須です。
脚の勝負だけでなく、一番でゴールを駆け抜けるための戦略、間合いの取り方、勝ち方。このようなことを解説を行いながら参加者に少しずつ、ロードレースを理解していただくこと。これこそがロードレースの文化を伝えることだと思っています。
【1日のまとめ】
丸一日、トータル走行距離60km。
無線機で常時アドバイスをし続け、参加者はかなりのクオリティでレベルアップし、感覚が鋭くなったと思います。
講習後の質問でも、より自らの運転技術を俯瞰するような発言が多く、より安全への意識も高まったようでした。
今回は同じロードバイクを乗る方でも、トライアスロンの方もヒルクライムの方も週末のグルメライドの方もいらっしゃりました。
みなが安全にレースやエンデューロ、もちろん公道での普段のトレーニングまで楽しみながら技術を学ぶことが出来るような機会を今後も増やし、より多くのカッコいい自転車乗りが増えていけばいいと思います。
次回は5月26土曜日、同じく富士スピードウエイP2にて開催です。
毎回、アシスト講師は変わっていますので次回の5月26日の会はどんな方が講師で来られるかは未定です。お楽しみに。
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Photo Yosuke Naruse