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FACTOR O2 ジオメトリーから考えるインプレ

ちょっと興味があり、取材も兼ねて約2ヶ月じっくり乗らせてもらいました。

【ストーリー】
イギリスブランドで、まだ新しいブランド。AG2のバイクスポンサーであり世界トップレースを走っているフレームである。

あのデイヴィッド・ミラー氏がプロデュースして、製作に加わっている。英国を象徴するユニオンジャックを、特徴的な極太ダウンチューブにあしらわれている。


重量は740g。正直僕はあまり重量を気にしない。

実際に乗ったフィーリング、踏んで見た感じ、進み具合は重量やスペックに表れないことが多いからである。


ましてやジオメトリーなんかは、数値から読み取れないほど乗ってみると非常に奥が深く難しい部分もある。

今回はこのバイクの性格や性能、それ以外に自分ならではの視点でバイクを乗った感想をつづりたい。

【デザイン】


FACTOR、日本語で要素。


なんとなく、重要な要素だけをシンプルに掴んでいる感じ。


1.デザイン、2.軽量性、3.剛性感。


このフレームを感じようとして五感を高めた時に、この三つのファクターしか思い当たらない。


そのくらい強烈なインパクトだった。

【ファーストインプレッション 】
パッと乗った感じ、まず硬くないなってことを感じた。パッキパッキのスペシャのSL6(サガンモデルを乗った感じからすると)とは全く対照的である。加速してみると30km/hから50km/hが特段に推進力を感じる。結構全域で。


さすがに高速域からのスプリントは少し、苦手かな。ただこの領域は、クライミングモデルの網羅すべき範囲ではないし、ホビーレーサーにはほとんど必要ないだろう。そこに至るまでの、乗り心地や脚の削れ具合などが結果としてスプリントに効いてくる。なのでロングライドも非常に滑らかな乗り心地の恩恵を受けられると同時に、その先のスプリントではだいぶアドバンテージを得られると思う。


多分このフレームのコンセプトとしては、山岳寄りのオールマイティー。ただ剛性がバキバキでない分、雑に踏んでいてはこのフレームのしなりを引き出せない。単純に横剛性はいい意味で、普通レベル(僕はこのような固すぎないフレームが良いと思う)。


だから先ほども話したように、30km/hからの加速感から、46km/h近くまで、滑らかでワイドな加速レベルのカーブを描くことができてる。


これが固すぎると、38km/から48km/hの加速感が強く出たりとその「美味しいゾーン」が狭いのでよりレーシーになりすぎてしまうわけだけど。


美味しいゾーンが広いのは一般ライダーには最高である。レーシーなフレームより乗りやすいフレームの方が一般的な脚には合うからである。


気をつけなきゃいけないのが、あまり横剛性がない(なんども言うが、いい意味で)ので、他のバイクと比べるとダンシングでバイクを振りすぎると
推進力がスポイルするのでそこは気をつけたい。

【ジオメトリー】

まずジオメトリーについて。


僕のサイズは52(トップ535mm)。マニアックな話だけど Jan Barklant選手(176cm)もサイズは52。130mmのステムである。単純比較できないが、事実である。

もう一つ、このバイクの不思議な点、全サイズ共通のシート角73度である。これは選ぶ時に注意されたい。


スタイルなのか、製造の都合なのか。ただデザイン的にはすばらしい。選手の時に乗っていたメーカーのフレーム開発の話だけど、ジオメトリーに表れない部分、例えばカーボンの積層や厚みのコントロールなどでも乗り味が変わっていくので、シート角全サイズ共通ってのはこれからのスタンダードになる可能性もありうるのかなとも思ったり。


とにかくシート角に関しては、乗り味的には寝てる感じはしないので悪い印象はなかった。


よってシート角が全サイズ共通なので、トップチューブで見てみると、535mmのO2では520mmのプロトスと同じリーチ(BB〜ヘッドチューブ水平換算)である。


リーチ部分をよく見て判断してほしい。


なので後ろに15mm、デフォルトでサドルが設置されることをある程度イメージしておくといいだろう。


実はまず最初にトップ515のフレームをテストさせてもらったのだけど、トップチューブ的にはOKだったのだが、ヘッドチューブが短すぎてハンドルポジションが出せず。ここは本当に難しいところ。しっかりサイズを合わせられるプロショップで選ぶべきだろう。

この写真ではオフセット量のあるシートポストが付属して来たのですが、僕の場合は付属してくるシートポストはゼロオフセットの方がベスト。ここもシート角が寝ている点が影響を及ぼします。


もし迷った場合はワンサイズ下を選ぶと良いだろう。ダンシングに関してはこのリーチという部分がとても重要になる訳だけど、(手の位置とペダルの位置を決めるから)ここら辺の深いことに関しては、僕の表現で勘違いされても嫌なのでまたにしよう。


身長で選ぶフレームサイズの選び方って、理論的に限界があるので注意が必要。


僕にとっては、出来たらトップ515mmの次が525mmその次が535であれば、僕のような中途半端な身長の人にはありがたい。


ただこのフレームはヘッドチューブは短め。ハンドルの高さは、サドルの高さに対してある程度相対なので、一般的な脚の短い日本人には非常にありがたい設計ではないかと思う。

【快適性】
普通にいい。これもシート角が寝てるからだろうか?


全体的にはシャキシャキ走るんだけど、シート角が寝ているせいか、乗り心地がなかなかのものでした。
悪路を走ることで有名なパリルーベ。


僕もフランスでの選手時代、パリルーベのU23版は走ったが本当にパンパなかった。本場の石畳は手の皮がむけて血まみれになったのを覚えているが、O2は軽量でありながら、その快適性からそのような路面でも使われているバイクである。

【バイクコントロール性】
これもいい。かなり楽しくてやばい。意のままに操れる。もう競技者ではない自分が優先することは、快適性と乗って楽しいか?である。


その中でバイクを操作している感じがとっても楽しい。ダイレクトマウントになってくれれば、下り坂がお楽しいかもしれない。ということで実はFACTOR O2のディスクブレーキモデルに非常に乗ってみたいと言う感じである。


【ブレーキング】
ダイレクトマウントに慣れていると、さすがに違うとは思う。


今講習を行なっている感じだと、ライダーの技術の方が問題がある場合がほとんど。繰り返しになるが僕は新時代のディスクブレーキが気になってしかたがない。


【コーナリング】
普通。この細いフォークからは考えられないしっかり感がある。

【ダンシング】
良い。ただちゃんとバイクを制御し扱えるようになると、よりこの良さがわかると思う。とにかく縦に縦に力をかける(決してバイクを振るなという意味ではない)

【スプリント】
中間加速はいい。はっきり言ってこれで平坦のレースだろうとなんだろうと問題なく勝負できる。出来ないわけがない。人間がエンジンである。


全くもって、その先の時速50km/hを越えるヨーロッパのレースは、エアロ性能はコンセプトの違うFACTOR ONEの方がいいのではないか?(乗ったことはないが)と思う。

悪いところというと、そんなにない。


正直このレベルのフレームで悪いところを探すことの方が難しいが、50km/hを超えたスピードで20分巡航するとかそうゆう部分では、姉妹フレームのONEがいいんだろうなってことくらい。


あとはホイールとの相性には注意したい。全体的にマイルドなフレームなので、横剛性の強いホイールとのマッチングがいいと感じました。


こシンプルなグレーに蛍光色とさりげないユニオンジャック。

イギリスのVBのウエアと合わせて、シューズもDキラーで。英国感の溢れるパッケージングで乗ると気分はなかなか。


やっぱりこの塗装も含め、人と被らない個性的かつシンプルなデザインが何よりも、このフレームの特筆すべきFACTORだと思いました。


次の一台を、個性的なバイクでオールラウンドに楽しみたい方には最高の一台かと思う。本当にいいバイクです。自信を持ってオススメしたい。


(株) Kinofit 木下智裕

協力:(株)トライスポーツ